
もちろん、店の新築には、土地、店、住居とも主人の退職金が注ぎ込まれたことは申すまでもありません。当分同居ということで。
「この子のために最後の基盤づくりだ」と退職金の全額と不足分の銀行融資を受けて作り上げたものでした。普通なら悠々自適の生活ができるものを借金返済の荷を負いながらの生活をすることになりました。
「あとは長男の努力に期待しよう」と、自らの運命開拓に家族をあげて全力投球してきた主人の自信に満ちた力強い言葉でした。
いよいよ、これからが長男にとっても正念場です。日常の多くの人とのふれ合いの中で人生の機微にも理解を深めさせてやりたい、ほんとうに生きることの意味をしっかり把握させてやりたい、「まだまだ楽隠居なんてできないぞ」考えると、することがいっぱいあって、ファイトがわいてまいります。
一緒に住むことによって長男の自立心やプライドに傷をつけないように心掛けることなどの申し合わせをして、仕事の中で気付いたこと以外は、口を挟むことを避け、本人の申し出だけに応じることにいたしました。
二男は、自然淘汰にまかせましたが、父親の背中をみて何とか自分なりの道を歩き始めたようです。現在は市内の高校教論として生徒たちと楽しく学習しています。
開店して間もなく満六年を迎えようとしています。開店の朝、お客さんが来てくださるか、ハラハラしていた不安も、今では嘘のように薄れ、なじみの客もでき何とか仕事にも快調なエ
前ページ 目次へ 次ページ
|

|